レストラン にて
アメリカに来て戸惑うことの一つに レストラン での食事があります。 レストラン と言わずファーストフードさえ、オーダーするのが大変です。
学生など若い子が働いていることが多いファーストフードの方が英語がわからないと容赦ないようなところがあり、こちらに来た当初は私はむしろファーストフードのお店へ行くのが億劫でした。
日本は大抵、外にショーケースがあって見本があるので言葉がたとえわからなくても指を指せばわかるようなものですが、こちらはそんなものはありませんし、メニューも写真がある場合もありますがほとんどが字で説明がしてあります。いちいち読まなくてはならないので英語ができないとその時点で既に面倒になります。
でも慣れればアメリカの外食もいいところがあり、まず最初に大きく日本と違うところはすべてにおいて「何でもあり」ということです。
え、どういうこと?と思われるかと思いますが、日本だと例えば今日のランチメニューがAランチ、Bランチとあったとすると、もうそれはメニューが決まっているので、AかBか選ぶだけで、そこで、Aランチの副菜がBランチについてたらいいのに、と思ってもそんなことは言いません。ところがアメリカではそこで、何かを別のものと交換して、ということが可能なんです。
ファーストフードでも、ハンバーガーでオニオンとトマトは抜いて、とかピクルスはなし、とかピザだと余分にお金がかかることもあるかもしれませんが、チーズを余分に、とかとにかく何でも言えばいいことが多いです。
レストランでは例えばフェットチーネ(Fettuccineというきしめんのような平らなパスタ)と書いてあるところを、エンジェルヘア(Angel hair、細いスパゲティ)に変えて、とかペンネ(Penne、ペンのような形をしたパスタ)にして、とかこの副菜(サイドディッシュ、side dish)はこっちにして、とかいうのもありです。
それから色々と選ばなくてはならないことが多いです。
私がたしか学生の時だと思いますがミシガンの姉のところへ遊びに来た時のことです。 レストラン へ行って注文をして、メインのものを頼んだところ、
“Soup or salad?”
と聞かれました。私はそれをなんと “Super salad” と聞き違え、その時既にアメリカの食事の量が多いことはわかっていましたので、スーパーサラダとかいうものがあってすごい量のものがきたら困ると思って、”No, thank you.” と言ってしまったのです。
ウェイトレスの人も姉夫婦もえ??という顔をしていましたが、姉も何もそこで言ってくれないので私はスープもサラダもこなかったんです!あとでわかりましたが、その料理にはスープかサラダをつけることができたんですね。
その他にもたくさん選ぶことがあります。
- パン
パンは先に全員にバスケットに入れて持ってきてくれることもありますが、一人一人注文するようになっているところもあり、そういう場合、白いパン(White)か全粒粉のパン(Wheat)、たまにこの写真にあるようなビスケット(Biscuit)と言いますがそんなものとか、レストランによってはコーンブレッド(Corn bread)、朝食屋さんだとイングリッシュマフィン(English muffin)とか色々あることもあります。
- サラダのドレッシング
こちらはウェイトレスの人がこれこれがあります、とペラペラ言うことがあって聞き取れない場合もあるかと思いますので、もう最初から何か一つお気に入りを決めておくといいかもしれません。
だいたい、イタリアン(Italian)、フレンチ(French)、ビネガレット(Vinaigretteーこれは赤ワインとかバルサミコ酢(Balsamic)とか何か Vinaigrette の前に言葉がついていることが多いです)、ランチ(Ranchーバターミルク、サワークリーム、ヨーグルトなどを使ったものでアメリカではとてもよく出てきます)などでしょうか。サザンアイランド(Thousand island)もたまに聞きますがあまり一般的ではなさそうです。
これもサラダに混ぜてしまうか、もし混ぜないで欲しい場合は
“I want to have dressing on the side.”
と言えば横に別の容器に入れて持ってきてくれます。
朝食を食べに行った場合はさらに
- 卵の調理方法について
“How do you want your eggs?”
左からSunny-side up(目玉焼き)、Over-easy(目玉焼きを裏返して表面も焼いたもの)、Scrambled(スクランブル)、Poached(ポーチドエッグ、落とし卵)です。ゆで卵にして、と頼んだことがないのでわかりませんが、言えばやってくれるかもしれません。ちなみにゆで卵は Hard-boiled egg です。
朝食であれば
- ソーセージかベーコン(Sausage or bacon)、またはハム
を選ぶこともあります。ソーセージも日本で言ういわゆる「ソーセージ」で長いものは Link と言い、ハンバーガーの中に入っているような平らなものは Patty と言います。
その他、日本と違うことといえば、
- 飲み物はアルコールや特別なもの以外は大抵はおかわり自由
それもください、と言わずとも、半分くらい一生懸命飲んだと思ったら溢れそうなくらいついでくれることが多いです。もういらない場合は “No, thank you.”と断りましょう。
この “Free refill” という制度は日本では考えられないことですが、これに慣れると日本へ行った時に大変です。そもそも日本のコップとアメリカのコップの大きさから違うのでアメリカでガブガブ飲むのに慣れると日本へ行った時には小さいかわいいコップに入った水だとアメリカ人は一気飲みしてしまいます。
- パンもおかわり自由
最初に書いたようにテーブルにパンをたくさん持ってきてくれる場合、なくなると頼めばそれもまた追加してくれます。
- コーヒーのミルク
コーヒーを頼むと日本で言うと「フレッシュ」になるのでしょうか、小さい容器に入った “Cream” か砂糖がいるかと聞かれます。その場合、フレッシュでなく、普通の牛乳がいい場合はそれも言えばくれることもあります。
カフェインなしのコーヒーがいい時は “Decaf” と言えばカフェインなしのコーヒーを持ってきてくれます。
- 一皿が大きいので何人かで分けて食べるのもOK
“We will share ◯◯. Can we have some plates?”
と言って、お皿をもらって取り分けてもいいです。
- 飲み物
レストランに行くと最初に何か飲み物は、と聞かれますが、特にいらない場合は水でも大丈夫です。その際にレモンを入れて、と注文をつけてもいいですよ。(Can I have water with lemon?)
ちなみにアメリカでは水は無料です。ヨーロッパでは有料でミネラルウォーターとかスパークリングウォーター(発砲水)とかあるかと思いますがアメリカではただの水で水道水ですからあまりおいしくないこともありますが、とりあえずは無料です。
- 専属のウェイター、ウェイトレス
日本のようにウェイター、ウェイトレスは誰でも通りかかる人に頼んでもいいのと違って、アメリカでは各テーブルに専属のウェイター、ウェイトレスがつきます。最初に私の名前は何々で今日は私が担当しますから、と言います。それはアメリカではチップ制になっていて、ウェイター、ウェイトレスの時給自体は非常に安く、皆チップが大きな収入源になっていることが背景にあります。ですから、何か頼む時は誰でも呼ぶのではなく、担当の人をよんで頼みましょう。
- お持ち帰り
何度も書いていますが、アメリカでは量が多いことが多いのでとても全部食べきれないことがよくあります。日本では食べきれないことはほとんどないですが、そもそも残った物を持って帰る、という習慣がありません。しかし、アメリカではそれが普通のこととなっていますので、残していると、
“Do you want boxes?”
などと聞かれます。それは箱に入れて持って帰りますか、と聞いているんですね。自分から言いたい時は
“Can I take this home?” や “Can I have a box?”
と言って頼んでもいいですね。
そしてこの残り物(Leftovers)を入れる箱のことを “Doggy bag” (Doggie bagとも綴る。)と言います。
- お皿を下げる
ちょっと食べずにいたりするとウェイター、ウェイトレスの人から
“Are you done?” とか “Can I take your plate?”
と聞かれることがあります。もう食べ終わりましたか?と聞いてお皿を下げようとしているのですが、まだの場合はまだ食べています、と言いますが、
“No, I am still working on it.”
というような言い方をします。
だいたいまだ食べ物が残っているのにすぐ下げようとする人が多いのは私はあまりよく思わないのですが、もちろん高級レストランへ行けばこういうことはないのだと思います。
この “I am done.” という表現は日本ではあまり聞きませんね。もう終わった、という意味でレストランの話の中で不適切ではありますが、子供がトイレへ行って、「終わったー」という意味でよく “I’m done!” と言います。その他、 “I’m done with this job.” と言えば、この仕事はもう終わり、やめたということです。中立的な終わりというよりも、もうあきらめた、もう嫌だからやーめた、というニュアンスです。他にも男女交際で “I’m done with her.” と言えば、もう彼女とは別れたんだ、という意味です。
何かやっているのを知っていて「もうできたー?」と催促するような意味で “Are you done yet?” もよく言いますね。
それから “Work on”というのはなかなか思いつかない表現だと思います。Workというと日本人的感覚ではすぐ「仕事」と思ってしまうのですが、食べるという行為に対して使うのは面白いですね。仕事で使う場合には、「そういえばあれ、できた?」と聞かれた時に “I’m working on it.” といえばまだ取り組んでいる最中だという意味になります。
- 支払い
お勘定は “Bill” でもいいと思いますがアメリカでは大体 “Check” という言葉を使います。
“Can (Could, May) we have the check, please?”
と言えばお勘定をお願いします、ということになります。
友達と二人で出かけて別々に払いたい時は
“Can we have two separate checks?”
と言えば分けてもらえます。二人くらいならいいですが、もっとたくさんでそれぞれ別に払うのもできないことはないですが面倒くさがられることもありますから最初に聞いてみた方が無難でしょう。
- チップ(Tip)
先ほども書きましたがアメリカではレストランで食事をした場合、15〜20%くらいのチップをおくのが普通になっています。
8人くらいの人数になると勝手に18%とか20%のチップが含まれていることもあります。その場合は請求書の下の方に何人以上の場合はチップを入れています、ということが書いてあり、 “Tip” でなく “Gratuity” という言葉が使われている場合もありますが意味は同じです。
その場合は間違えて更にチップを追加しないように気をつけましょう。
アメリカでの食事、このように色々と選ぶことがあって少し大変で、昔両親が来て食事に行ってあれこれ聞かれるので父はもうわからないから何でもいい、という感じになりました。日本では選択肢を与えられることもなくほぼ一方的に与えられる教育を受けたのでそんなこと聞かれても選べん、と言っていたのが今でも印象に残っていますが、その通りかなと思います。
アメリカではほんとに小さい頃からあれやこれやと子供に選ばせるようになっていて、よく言えば個人が尊重されているので、皆小さくても私はこれがいい、というのがすごくはっきりしているような気がします。どのパンがいいのか、というような些細なことでも自分の意見を言って育つ、こういうのが積み重なって良くも悪くも自己主張がしっかりできる人間が出来上がっていくんだなーと私は思います。