アメリカの大学にかかる費用

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現在うちの娘は高校最後の学年で来年(今年の秋)からは大学生になるはずである。

高校を出たら大学へ行くのが私が住む地域では普通になっているが、この大学の費用が異常な高さで驚かざるを得ない。

私が大学を受験したのは今から36年前、1986年のことであった。国公立に落ちたため、やむなく私立の大学に進学したが文系だったため理系よりは安く、曖昧な記憶だが授業料が年間35-6万円だったのではないかと思っている。(実は大学の授業料など全く記憶がないため、もし同じ世代の人がいて覚えていたら是非教えてほしい。)今、同じ大学、学部で見ると今年の4月に入る人たちの授業料が87万で入学金や諸経費を入れると123万円ほどになっている。これを高いと見るのか安いと見るのかは立場によってかなり違うと思うが、36年という年月を考えれば妥当なのかとも思うし、今、アメリカの大学受験に直面している私から見ると格安としか思えない。

今日の為替レート、1ドル114円で計算すると120万円として10500ドル強である。

これが私立の文系の大学費用とは日本はなんと高等教育が安いのかと驚いてしまう。

比較にアメリカの大学の授業料を以下に書くがどれだけ高いかわかっていただけるだろう。

アメリカでは自分が住む州の大学へ行くのと他州の大学へ行くかによって授業料が違い、当然州内の大学の方が安い。私が住むのはオハイオ州なのでオハイオ州の公立の大学、私立、そして他州の大学を示す。(これは授業料のみの額。)

  • オハイオ州立大学(公立):12000ドル、州外の人は33500ドル
  • オハイオ州マイアミ大学(私立):16000ドル、州外の人は36650ドル
  • テキサス州、私立大学:51600ドル
  • ニューヨーク州、私立大学:56000ドル
  • コロラド州、私立大学:53700ドル
  • ノースカロライナ州、公立大学:36000ドル
  • ミシガン州、公立大学:40000ドル
  • ペンシルバニア州、公立大学:33700ドル

これが年間の授業料である。4年間で高いところであれば22万ドル以上かかることになる。授業料だけで2500万円!この上に寮や生活費がかかることを思うといかに高いかおわかりいただけることだろう。

ほとんどの大学では一年生は寮で生活をするのでその分の費用も初めから必要経費として入っており寮や本など諸経費をいれると上記のコロラド州の大学では年間74000ドルと試算された。

どうやってそんなお金を出すのだろうか。

  1. 奨学金
  2. 学生ローン
  3. 親の教育費積み立て

奨学金は家庭の経済的必要性に応じて出されるものと成績や課外活動など経済的な理由にかかわらず出されるものとあり、その他、大学以外の色々な機関が出すものがあるので調べて申請してみるといいのだろう。

ほとんどの人は学生ローンをするようであるが、卒業して早々何百万円という借金を抱えるのはかわいそうな気がする。すぐに仕事があればどんどん返していけるがそうでなければどんどん借金がたまり、そこで近年アメリカの議会で議論されるように学生ローンの責務を免除してしまおう、などということが言われるのだと思う。しかし真面目に働いてコツコツ返済してきている人もいるので、一概にローンを免除してしまうというのもどうかと思う。一律にいくら減額、とか何年以内に既に返済を完了した人には逆に一定額を支給するとか何かないと単に免除では不公平感がぬぐえない。

3番は単に親が現金かローンで全額払う。

4番は3番と同じで親が払うのだがアメリカには各州が設定する教育費用の積み立て金融商品(529とよばれる)があり赤ちゃんの頃から積み立てをすることができ、それぞれのプランを運営する金融機関が投資し、貯蓄していける。

これは教育費にしか使えないため、別の用途で引き出そうとすると罰金が課される。

うちも子供たちが小さいうちからこの529をしていたので、それを使えるのはありがたいがここまで高いと州外の大学の場合それで全てを賄うことは不可能である。

この5万ドル以上する大学の一つから一番高額な奨学金を出します、と連絡があり10万ドルというので喜んだのだが、年間で考えると半分にも満たないので残念ながらそれだけでは不足である。

私立は一人10万ドルの奨学金を出せることからわかるようにかなりの財源を確保していて多額の奨学金を与えて学生にきてもらっているものと思われ、この財源の豊かさには驚かされる。

なぜアメリカの大学がここまで高いのか私は真剣に調べたことがないのでわからないが、上にあげた大学はすべて D1 (Division 1) *注)といわれる大学で生徒数、スポーツチームの数などにおいて一番規模が大きい大学なのでスポーツ施設はもちろんのこと学術の面でも施設が整っており、研究機関も多いので運営費用もかさむのであろうと想像する。

注)D1 というのは The National Collegiate Athletic Association(全米大学体育協会)、略してNCAA と書き、エヌ・シー・ダブル・エーと読むこの協会に属し生徒数、スポーツチームにおいても一番規模が大きい大学のことを言う。

例えばオハイオ州立大学は学士の学生数は47000人ほどにのぼり、学生フットボールが強く全米でいつも上位を占め、スタジアムは10万人以上収容できる。どれほど規模が大きいかわかっていただけるだろう。

教授やスタッフの給料は日米比較するとどうなのだろうか。

私がカリフォルニアのモントレーの大学院に留学したのは1995年のことで当時の授業料は年間11000ドルくらいだったと記憶している。その後、毎年1000ドルずつくらい上昇していたが、今見てみると42634ドルと出ている。27年で4倍。毎年1000ドル以上値上がりした計算になる。

そのモントレーの大学院の通翻訳プログラムは私が行っていた頃は日本人が多く、アメリカ人の方が少数派であったが、10年近く前に聞いたところではアメリカ人ばかりで日本人は非常に少なくなったとのこと。今はどうだかわからないが、ここの地元のオハイオ州立大も日本人の留学生がめっきり減ってしまったと聞くのできっとモントレーでも少ないのだろう。日本人の若い人たちの目が海外に向かなくなったと聞いたことがあり残念に思っていたが、それは単に内向的になったというのではなく、むしろこれほど授業料が高いのでなかなかアメリカに留学できなくなったので興味がなくなったのかもしれない。

もちろんインフレもあるので単に授業料だけを比較することはできないが、大学の授業料の上昇に匹敵するほど給料が上がっているとは思えないのでアメリカ人にとっても厳しい状況であり、国力が落ちている日本の学生にとっては更にハードルが高くなっていることはうなづける。

ここまで高い授業料を払って大学に行く価値があるのかどうか、というのは難しい問題である。

皆が良く知る億万長者のビル・ゲイツ氏やマーク・ザッカーバーグ氏はハーバード大学を中退しているし、大学に行かなくても成功する人は確かにいるが、こういう人たちは天才、もしくは人並み外れた能力があったり努力ができる人たちだと思う。この二人はハーバードに入ったという時点で既に優れた何かがあったのだろうと思われるが、今の時代、インターネットを使って財をなす人はたくさんいて学位があるなしは関係ないと思う。

最近では電気工、溶接工、配管工などの特殊技術やナースなどの技能、資格を持った人が重宝されるので大学ではなく職業訓練をしてくれるところに行った方がいいのではないか、という話も聞くので何も名の通った大きな大学に行くだけが大事だということは決してない。

しかし普通の人はなかなか成功を収めるまで努力ができない、またはやりたいことがわからず、どこかの会社で働くのであればやはり学位があった方が得なのは事実であるので大学へ、ということになる。

大学への進路決定をするのは17、18歳。そんな年で自分が将来何をしたいか明確な目標がある人はどれくらいいるだろうか。実際いるのは確かだが、わかっていない人の方が大半であろう。そこでとりあえず興味がありそうなことを勉強するために大学に行く、という人が多いと思うが、大学で色々なことを学び、また色々な人に会い見聞を深めていく中で自分の将来がだんだん決まっていくと思うので、やはりこれは重要な選択である。大学でどんな先生、先輩、友達に出会うのか、というのは今後の人生にとって大きな影響を与えるので、その意味で自分に合った大学に行くことが大事だと思う。

これだけの投資ができる人はやはり恵まれていると言わざるを得ず、確かにやる気があれば奨学金を出してくれるところもたくさんあるが、この額を聞いた時点で諦めてしまう人もたくさんいるのではないかと私は危惧している。

ここでどうしても貧富の差の問題が出てくるがそれはまた次回。

春先にはどこの大学へ行くことにするのか決定を下すことになるが、積立金で賄えるのか、はたまたローンをしてもらうことにするのか、それとも今後4年間、娘へいくらか「投資」することになるのだろうか。

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2 Responses

  1. Kyoko says:

    カナダが安いというのは私も聞きました!実際カナダの大学に子供さんが行った人もいます。ほんとにここまで高いのはアメリカだけかもしれないですね。きっとヨーロッパでもこんなことはないと思います。この際、日本に留学した方がいいんじゃないか、と思います。こんな調子で値上がりしていったらアメリカの大学には皆行けなくなっちゃうんじゃないかと思いますが、そういうことはないんでしょうね。どこかで頭打ちになって上がらなくなるのでしょうか?でも問題だと思います!!

  2. か~ちゃん says:

    これなんですよ、カナダの強み。私も留学生として大学を始めたものの、学生結婚ですぐに永住権取得で、学費は市民価格。1年2学期制度でフルタイムで年間$3,000くらいだったのかな。1982年卒ね。それから〇〇年経って、娘がオハイオからカナダに戻り故郷のビクトリア大学(私の母校でもある)で学士号プログラム。デジタルアート専攻。卒業して10年以上経つけど、当時年間学費が$6,000に満たない額だったと思う。今現在ローカル人として文系のコースをフルタイムで取ると、$7,000弱。これには授業費用、アスレチック費用、諸々が入って。州立大学でも各校で学費は異なる。同じBC州でもバンクーバーのUBCだと、年間$9,000弱。それでもアメリカの大学と比べると俄然安い。留学生は2倍~3倍の学費だけど、それでもアメリカの大学より安いかも。カナダに来ますか?(笑