復活祭-Easter-に関する英語
去る日曜日、4月8日はうちではイースターでした。アメリカに住んでいらっしゃる方の中にはあれ、イースターは先週じゃなかったっけ?と思われた方も多いかと思います。アメリカでキリスト教といえば大半はカトリックやプロテスタント(ルター、バプティストなども含む)などの西方教会 (Western Christianity) ですが、それとは別に東方教会 (Eastern Christianity) というのがあり、そちらは旧暦を採用しているため、まれに同じこともありますが、ほぼ毎年日にちがずれます。今年は西方教会のイースターは4月1日で、東方教会は8日だったのです。もう少し早めにこの記事を書けば良かったのですが、来年また耳にする、体験することと思いますので、参考までに 復活祭に関する英語 を取り上げます。
まず、
1. 西方教会と東方教会とは?
キリスト教はもともとご存知のようにイエス・キリストの教えを元にした宗教でエルサレムを聖地としています。皆さん、世界史で勉強したと思いますが、中近東、ヨーロッパでは古代、ローマ帝国が長年にわたり広大な土地を支配していました。その時に広まってきたキリスト教は元は当然一つのものであったのですが、徐々に教義の理解に相違が生じ、東ローマ帝国の中心であったコンスタンチノープル(今のイスタンブール)を中心に発展したのがギリシャ正教 (Greek Orthodox Christianity) で、明確にいつ、ということは諸説あるようですが、11世紀頃に正教会とカトリック教会は分離しました。
カトリックを中心とする西方教会からはその後、また色々な宗派が分かれていきました。
現在ではキリスト教は大まかにいうとカトリック、正教、プロテスタント、と三つに分かれていて、旧暦を使用しているのは正教会だけです。
教えにいかほどの違いがあるかは私はよくわかりませんが、簡単なところではカトリックでは司祭は結婚してはいけませんが、正教会の司祭は結婚しています。(ってほんとに身近なことですが・・・!)
儀式的なところ、厳格なところも似ていますが、カトリックほど色使いがけばけばしくない感じがします。私と夫は新婚旅行でイタリアに行きましたが、カトリックの総本山であるバチカン市国の聖ポール寺院の上に立つ十字架は彼のネックレスと同じ、つまり正教会のものとまったく同じなので、やっぱり一緒なんだなーと彼は感銘を受けていました。
正教会は行事や教えは皆一緒なのですが、各地域で管轄区が分かれているので、だいたい国で分かれていて、ロシア、ウクライナ、ブルガリア、(夫の所属する)セルビア、ギリシャ、など(もっとたくさんありますが)それぞれの教会があります。
イースターはもともと移動祝祭日といって日が決まっていません。どうやって決まるかというと春分の日以降の満月の日の次の日曜日です。
暦自体が正教では旧暦になっているのでそれで日にちがずれるのです。(同様にクリスマスも正教会では12月25日ではなく1月7日です。)
ちなみに暦は一般的なのがグレゴリウス暦で、英語では Gregorian calendar で、旧暦がユリウス暦で Julian calendar と言います。
キリスト教ではイエス・キリストが処刑されたあとに生き返ったと言われていて、そこにこそ意味があるため、宗教的にはイースターはクリスマスよりも重要視されていると思います。
2. Lent(レント)
これは「受難節、四旬節」等と日本語では言うようですが、イースターまでの40日間の期間を言います。正教では月曜日からレントが始まり、この期間を “Great Lent” と言い、この間は食事を制限したり、ざんげをしたり、というのがしきたりです。
これを書いていて調べてわかったのですが、カトリックでは日曜日を数えないで40日というそうです。なので実際には6週間半ですね。正教では日曜日も数えて40日で、しかもイースターの前の聖週間は特別扱いになっていて40日には含まれていませんので、実際にはレントは7週間続くことになります。
3. Ash Wednesday(灰の水曜日)
上記のレントの最初の日。正教では何もありませんが、西方教会では額に灰で十字を記す、ということをするのでそうよばれているようですが私はこの日にカトリックの教会に行ったことがないので実際には見たことはありません。
4. Fasting, Fast(食事制限)
“To fast” と動詞で、「速い」”fast”とは違います。これは調べると「断食」と出てきて、何も食べないのかなと思うのですが、例えばイスラム教のラマダンでは日中(日の出から日の入り)は完全な「断食」で何も食べない、飲まない、というのもありますが、キリスト教の場合、「食事制限」という言葉が当たると思います。
正教の場合、肉と乳製品を絶ちます。上記で書いた “lent” の期間、食べるものを制限するのですが、カトリックでは特に何、というのではなく自分で選んで何かをやめる、我慢する、ということもするようです。例えば私はコーヒーをやめよう、チョコレートをやめよう、など。欲しいものを我慢して日々の罪深い行いを改める、というのであれば私はその方が意味があるかな、と思います。正教では肉と乳製品は絶ちますが、お酒はいつも飲み放題なので、ワインとパンとおいしい魚、シーフードがあれば何も困らないじゃないか、といつもひそかに思っています。
この間に食べる肉なしの料理、卵や牛乳なしのデザートなどは “lenten” dishes, desserts と言います。
先週、血液検査に行きましたが、血液検査の前は前夜から朝も何も飲まず食わずで行くことがありますね。あれも “fasting” です。
“Are you fasting?”
と聞かれました。
この場合、「断食」といえばそうなんですが、日本語では「断食してますか。」とは聞かれないと思うので、何も飲んだり食べたりしてませんか、ということですよね。
5. Fat Tuesday, Mardi Gras
脂の火曜日、と日本語で言いますか?調べたらそうありました。これは先にありました Ash Wednesday の前の火曜日ですね。これからイースターまでの40日間、食事も質素にしなければならないのでお祝いをしよう、というお祭りです。Fat Tuesday のフランス語が Mardi Gras ですね。
ブラジルのリオのカーニバル、ニューオーリンズのカーニバルは有名ですがどちらもこのマルディグラ。カトリックのお祭りです。
6. Palm Sunday(聖枝祭)
イースターの前の週の日曜日のこと。この日にイエス・キリストがエルサレムに入城したとされ、人々がヤシの枝(葉っぱ)を持って迎えたと言われています。(当時ヤシは王様などに対し敬意を表す場合に使われていたようで、キリストの精神的勝利、偉大さを称えました。)
今日でも教会ではヤシの枝を持って信者が歩いたりするようですが、正教ではネコヤナギ(pussy willow)を使います。(写真を参照。)この日から聖週間が始まります。
7. Holy Week(聖週間)
イースター前の1週間のこと。
8. Good Friday(聖金曜日)
イエス・キリストが十字架にかけられた日のこと。ならばなぜ “Good” なのかな、と思うのですが、はっきりした説はなさそうです。Godの意味だとか、聖なる日であるからgood なのだ、とか諸説ありそうですが、一般の人にとっては企業も休みとなりこの日は大抵の場合祝日になっています。
9. Passion(イエス・キリストの受難)
“Passion” と言えば普通に「情熱」という意味で
“Music is my passion.”
は「音楽が私の命です。」のような感じでそれくらい情熱を傾けていることになります。また、形容詞にして “passionate” にするとこちらも割とよく使われますね。
“What do you feel passionate about?”
「何に情熱を感じますか?」
しかし、”the” がついて大文字の “Passion” はイエス・キリストの受難のことを意味します。
メル・ギブソンが監督をした2004年公開の映画に “The Passion of the Christ”があります。イエス・キリストの拷問や処刑に至るまでの12時間の様子が描かれていて悲惨な映像が次々と出てくるので見るに耐えない気持ちになる人も多いかと思いますが、参考までに。
そして、今年に入って、その続編の映画が出るというニュースがありました。
イエス・キリスト復活に焦点を当てた映画のようです。
10. Crucifixion(十字架にかけること)
非常に残酷な処刑の仕方です。古代にはこうして罪人は処刑されました。動詞は “to crucify” です。
11. Tomb(お墓)
お墓というと “grave” が一般ですが、地下に埋めるのではなく地上にあるお墓のことは “tomb” とよく言います。イメージ的には日本の古墳ですね。日本のお墓は埋葬でなく火葬なのでなんとなく”tomb” は合わない気がしますが、そうでもないのでしょうか。
イエス・キリストは処刑されたあと tomb、お墓に入れられたのですが、そこから3日目に復活し、いなくなっていたと言われています。
12. Resurrection(復活)
そしてやっとイエス・キリストの復活です。これは大文字で書くとイエス・キリストの復活のことですね。一般的には死からの復活という意味ですが、スポーツ選手が復帰するとか俳優が一時人気が落ちていたのが復活する、といったような意味で使われることもあります。
例えばこの記事ではMatt Mooreという野球の選手が復活しようとしているという意味で
“Matt Moore has his shot at career resurrection” と見出しが出ています。
13. Lamb
子羊ですね。夫の教会では何かお祝いというと必ず子羊が出てきます。イースターでも然り。イエス・キリストが “Lamb of God” と言われるように子羊はキリスト教でよく出てくるシンボルですね。子羊を食べる風習はキリスト教が生まれる前のユダヤからあったようです。
14. Sacrifice(犠牲)
これもよく出てくる言葉です。イエス・キリストが自分を犠牲にして私たちのために十字架にかかり苦しんでくれた、と言われています。この言葉は別にイースターや宗教にかかわらず日常で使います。
“I sacrificed my time to go with you.” (あなたと一緒に行くために私は時間を割いたんです。ー自分の時間を犠牲にした。)
15. Eggs (卵)
イースターといえば卵ですね。これは卵が新しい命を表すことからキリストの復活につながっています。
卵の色ぬりもよくやりますね。Egg coloring と言います。染めるということで “egg dyeing” とも言います。お店には卵に色をつける染色剤が容器とセットになって売られています。ワックスで絵や字を書いて染めるとその部分が色がつかずはじけるのでそういう方法でデザインをつけたり、プラスチックでできた飾りを卵の周りにはめてお湯にいれると縮んでぴったりくっついたり、色々楽しいですね。染色剤を入れる時にお酢を入れるとパステル調の色ができるんですよ。
東欧では卵に絵を描いたりデザインをつけたりするのは美術になっています。本物の卵の上に小さな穴をあけて中身をぬいてこんなにきれいな模様を描くんですね。これはだちょうではありませんが(!)普通のニワトリより大きな卵です。
こちらは本物の卵ではないですが、飾りですね。
子供達向けには Egg hunt もよくやりますね。イースターが近づいてくると(というよりバレンタインデーが終わったら、ですかね)プラスチックの卵が店頭にたくさん並びます。その中にチョコレートやおもちゃなどを入れて庭に隠したりばらまいて子供達が探したり、拾います。近所の教会や市の施設でもegg hunt の行事は必ずやっていると思うので、経験までに行ってみるといいですね。
16. Easter bunny
クリスマスのサンタクロースのようにイースターではうさぎが子供達に贈り物を持ってきてくれると言われています。これは古代のキリスト教ではなく、もっと後にイギリスやドイツで言われるようになったことだという説もありますが、うさぎは赤ちゃんがたくさん生まれるのでそういう意味でうさぎがイースターと関連づけられた、という話もあります。
モールにはイースターのうさぎがいて子供達と写真を撮っていますが、結構怖いですよね。よく子供が泣いていますが、あれは怖いだろうなーと私も思ってしまいます。
以上ざっとこんなくらいでしょうか。(ざっとと言っても随分ありますね。)アメリカには色々異なる人種がたくさん住んでいるのですが、それでもまだキリスト教が主流ですので、日々の生活にもキリスト教が根付いています。しかし、日本人が深く考えずに初詣に行ったり赤ちゃんのお宮参りをしたり、普段は何もしていないのに突然お葬式になると神仏が出てくるように文化としてやっているだけか、私の夫のように心から信じてやっているかどうかは人によってかなり違うと思います。
クリスマスが時期的に冬休みで家族親戚が集まるのに都合がいいのに対し、イースターは時期も決まっていないですし、学校の春休みと重なる時もあればそうでない時もあるので、家族で集まるところもあるでしょうが、そうでない家も多いと思います。当然のことながら非常に宗教の意味合いが深い祝日なので家庭によって色々だと思います。
キリスト教徒でなくてもアメリカにいれば必ず目にしたり経験することです。内容を理解してるかどうかによって人との話の理解も違うと思うので、知っていて損はない知識です。