“I am sorry”と「ごめんなさい」

日本人は簡単に謝る習慣があると思います。そこまで深刻な場面でなくても、待ち合わせに遅れて「あーごめん、ごめん、遅くなっちゃった。」とか「ごめん、今のは間違い。」とか大したことでなくても使う言葉で、その人が悪いと思っている、責任を感じている、ということが感じられて言われたら怒る気持ちも和らぎますし、便利な言葉だと思います。

また同時に真剣に謝らなくてはならない場面でも使える言葉ですよね。言い方によって心から「ごめんなさい」と言っているかどうかわかります。

今回の話はそういう日本語でよく使う「ごめんなさい」を英語にしようとするとすぐ “I am sorry.” になってしまうのですが、この “sorry” という言葉は本当に謝罪する時のみに使う言葉なのでしょうか、という内容です。

「ごめんなさい」がなぜ “I am sorry” になるかというとそれはそのように教えられているからというのが一番の理由かと思いますし、別に間違いではないのですが、英語では、特にアメリカではそう簡単には謝らないのが普通です。

よく知っている人同志なら “sorry” もいいかもしれませんが、赤の他人に何かあった場合に簡単に “I’m sorry.” と言ってしまうと自分の非を認めてしまうことになるので気をつけて言った方がいいでしょう。

それ以前に “I am sorry.” は本当に心から謝罪したいという気持ちを表す言葉なので大したことでない場面で日本で「ごめん」という感覚で “I am sorry.” と言うと、”Don’t be sorry!” (謝ることないよ!そんな悪く思うことないよ!)などと返されることもあります。

もちろん、歩いていて人に当たってしまったような場合には “Sorry!” と言うのは問題ないです。日本でいう「すみません!」という感じですね。

英語で “sorry” という言葉の定義を見るとMerriam-Websterでは下記のようになっています。

https://www.merriam-webster.com/dictionary/sorry

一番最初に出てくる定義は謝罪する意味ではなく「悲しく思う」「残念に思う」「心を痛める」「同情する」というような意味です。

I am sorry to hear the news. 「知らせを聞いて悲しく(残念に)思う。」(例えば友達が試験に落ちたとか事故に遭ったなどの悪い知らせを聞いて言う。)

I am very sorry for your loss.

これはお悔やみとして使う言葉です。(例えばお母様が)亡くなられて本当に残念なことです、ということから日本語で言うと「お悔やみ申し上げます」という感じになります。

I feel so sorry for her.

と言った場合は彼女に同情するということで「彼女、ほんとにかわいそうだわ」というような感じになります。

このような “I am sorry” は大抵は他人に対して悲しく思うのであって自分に対して思うのとは違います。その場合は

I feel sorry for myself.(自分がかわいそうになる。)

と”feel” を使う方が多いと思います。

二つ目に出てくるのが謝罪する意味での “sorry” です。

I am sorry that I broke your vase. (花瓶を割ってしまってごめんなさい。)

I am very sorry that I got mad at you. (怒ってしまってごめんなさい。)

などが日本語の謝罪する意味での “sorry” の使い方です。

他には

I am sorry to interrupt you, but I have to go. (例えば会議中だけども自分は退室しなければならない場合に会話を遮って自分が出なければならないことを言う場合、「申し訳ないですが私はもう行かなければなりません。」)

I am sorry that you don’t agree, but this is what was decided. (同意していただけないのは残念なことですが、こう決まりました。)

など少し謝罪とは違いますが、I am sorry ~, but~ として最初に断って残念な気持ちを表しておいて次に自分の要点を言う言い方として上記のような場面で使えます。

https://www.collinsdictionary.com/us/dictionary/english/sorry

こちらの辞書にたくさん例文があるので見てみてくださいね。

The fire left Kuwait’s oil industry in a sorry state.

という例文がありますがこれもまた別の使い方ですね。「火災によりクウェートの石油業界は悲惨な状態になりました。」「哀れな、惨めな」というような意味になります。

また”sorry” を使ってよく言われるのは

Better safe than sorry.

という言い回しです。これも少し違った使い方です。「あとで残念に思うより安全な道をとった方がいい」というのは少し変な訳ですが、あとで後悔するより今面倒であっても、不必要であっても念のためにやっておいた方がいい、というような感じです。

例えば天気予報では雨の予報は10%だからおそらく大丈夫だろうけれど、少し荷物になっても傘を持って行った方がいい、とか体の具合がどこかおかしいけどお医者さんに行かずに様子をみている人に、今早いうちに診てもらった方がいいんじゃない?と促すとか、そういう状況で使えます。

なんでこの言葉を思いついたかというと昨日、私は頭痛がして吐き気もしたので少し休んでいました。そこへ夫が帰ってきました。彼は日本語もわかりますし話もかなりできるのですが、時々ニュアンスが違ったり面白いことを言います。その彼が「残念だね」と言いました。私は何が残念なのかわからず、「何が?」と聞いたら私が具合が悪いことについて言っていました!

何がおかしいのかと考えてみましたが、やはり日本人であればそこで「残念だなー」とは言いませんよね。もし、昨日の夜に何かディナーやイベントが予定されていてそれに私が行けなくなった、というようなことであれば、そういう話をして「残念だね」ということになると思いますが、何もなく突然「残念」と言う言葉は出てこないですね。

I am sorry that you feel sick!「具合悪いなんてかわいそうだなー」

ということから「残念」という言葉が出てきたのだと思いますが、面白いなーと思いました。以前から彼の感覚では 「sorry = ごめん」よりも「sorry = 残念」という等式の方が強いなーと思っていたのでわかっていたはずですが、やはりとっさに日本語脳では気づかなかったです。

Photo by Brett Jordan on Unsplash

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2 Responses

  1. Michiko says:

    これは面白い!「残念だね」がSorryの等価言葉なんだ。そういうのは日本語ネイティブでないけど日本語が結構できる人と一緒に生活すると、たくさんの発見があるんでしょうね。シェアありがとうございます。頭痛はもう大丈夫ですか?お大事に。